宗「はい十二に成ります」

        九十一

 新「十二に、善いお小僧さんだね、十一二位から頭髪《あたま》を剃《す》って出家になるのも仏の結縁《けちえん》が深いので、誠に善い御因縁で、通常《なみ》の人間で居ると悪い事|許《ばか》りするのだが、斯《こ》う遣って小さい内から寺へ這入ってれば、悪い事をしても高が知れてるが、お父様《とっさん》やお母《っか》さんも御承知で出家なすったのですか」
 宗「そうじゃアありません、拠《よんどころ》なく坊さんに成りました」
 新「拠なく、それじゃアお父《とっ》さんもお母さんも、お前さんの小さい中《うち》に死んで仕舞って、身寄頼りもなく、世話の仕手もないのでお寺へ這入ったという事もありまするが、そうですか」
 音「なにそういう訳じゃアなえが、此のまア宗觀様ぐらえ憫然《かわえそう》な人はねえだ」
 新「じゃアお父さんやお母さんは無いのでございますか」
 宗「はい、親父《おやじ》は七年前に死にました」
 といいながらメソ/\泣出しました。
 音「泣かねえが宜《え》えと云うに、いつでも父様《とっさま》や母様《かゝさま》の事を聞かれると宗觀|様《さん》
前へ 次へ
全520ページ中491ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング