致しますという、新吉改心の端緒《いとぐち》でございます。

        九十

 偖《さ》て申し続きました深見新吉は、お賤を連れて足かけ五年間の旅中《たびちゅう》の悪行《あくぎょう》でございまする、不図《ふと》下総の塚前村と申しまする処の、観音堂の庵室に足を留《とめ》る事に成りました。是は藤心村の観音寺という真言寺《しんごんでら》持《もち》でございまして、一切の事は観音寺で引受けて致しまする。村の取附《とりつき》にある観音堂で、霊験《れいげん》顕著《あらたか》というので信心を致しまする者があって種々《いろ/\》の物を納めまするが、堂守《どうもり》を置くと種々の悪い事をしていなくなり、村方のものも困って居る処で、通り掛った尼は身性《みじょう》も善いという処から、これを堂守に頼んで置きました。是へ新吉お賤が泊りましたので、比丘尼《びくに》は前名《ぜんみょう》を熊と申す女に似気《にげ》ない放蕩無頼を致しました悪婆《あくば》でございまするが、今はもう改心致しまして、頭髪《あたま》を剃《そ》り落し、鼠の着物に腰衣を着け、観音様のお堂守をして居る程の善心に成りまして、新吉お賤に向って、昔の懴悔
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