、して見ればお賤は腹違いの兄弟であったか、今迄知らずに夫婦に成って、もう今年で足掛七年、あゝ飛んだ事をしたと身体に油の如き汗を流し、殊《こと》には又其の本郷菊坂下へ捨児《すてご》にしたというのは、七年以前、お賤が鉄砲にて殺した土手の甚藏に違いない、右の二の腕に痣《あざ》があり、それにべったり黒い毛が生えて居たるを問いし時、我は本郷菊坂へ捨児にされたものである、と私への話し、さては聖天山へ連れ出して殺した甚藏は矢張《やっぱり》お賤の為には血統《ちすじ》の兄であったか、実に因縁の深い事、アヽお累が自害の後《のち》此のお賤が又|斯《こ》う云う変相になるというのも、九ヶ年|前《ぜん》狂死なしたる豊志賀の祟《たゝり》なるか、成程悪い事は出来ぬもの、己は畜生《ちくしょう》同様兄弟同志で夫婦に成り、此の年月《としつき》互に連れ添って居たは、あさましい事だと思うと総毛立ちましたから、新吉は物をも云わず小さくかたまって坐り、只ポロ/\涙を落して居りました。

        八十九

 尼「とんだ面白くもない話をお聞かせ申したが、まア緩《ゆっ》くりお休みなさい」
 新「実に貴方の話を聞いて、私《わっち》
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