、何も物は欲しくありません、村の衆が時々畠の物なぞを提げて来てくれるから、もう別にうまい物を喰度《たべた》いという気もなし、只観音様へ向ってお詫事をして居るせえか、胸の中《うち》の雲霧《くもきり》が晴れて善に赴《おもむ》いたものだから、皆さんがお比丘様/\と云って呉れ、此の観音様も段々繁昌して参り、お比丘さんにお灸《きゅう》を据《す》えて貰えのお呪《まじない》をして貰い度《たい》のといって頼みに来るから、私も何も知らないが、若い時分から疝気《せんき》なら何処《どこ》が能《い》いとか歯の痛いのには此処《こゝ》が能《よ》いとか聞いてるから据えて遣ると、向《むこう》から名を附けて観音様の御夢想《ごむそう》だなぞと云って、今ではお前さん何不足なく斯《こ》う遣って居ますが今日|図《はか》らずお前達に逢って、私は尚《な》お、観音様の持って入らっしゃる蓮《はす》の蕾《つぼみ》で脊中を打たれる様に思いますよ、まだ二人とも若い身の上だから、是から先《さ》き悪い事はなさらないように何卒《どうぞ》気をお附けなさい、年を老《と》ると屹度《きっと》報《むく》って参ります、輪回応報《りんねおうほう》という事はない
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