敷が直《じき》に改易に成ってしまい、仕様がないから深川櫓下の花屋へ此の娘《こ》を頼んで芸妓《げいしゃ》に出して、私の喰い物にしようと云う了簡でしたが、又私が網打場の船頭の喜太郎《きたろう》という者と私通《いたずら》をして、船で房州《ぼうしゅう》の天津《あまつ》へ逃げましたがね、それからというものは悪い事だらけさ、手こそ下《おろ》して殺さないでも口先で人を殺すような事が度々《たび/\》で、私の為に身を投げたり首を縊《くゝ》って死んだ男も二三人あるから、皆《みんな》其の罰《ばち》で今|斯《こ》う遣って居るのも、彼《あ》の時に斯ういう事をしたから其の報いだと諦め、漸々《よう/\》改心をしましたのさ、仕方がないから頭髪《あたま》を剃《そり》こかし破れ衣を古着屋で買ってね、方々托鉢して歩いて居る中《うち》、此の観音様のお堂には留守居がないからお比丘さん這入って居ないかと村の衆に頼まれるから、仮名附のお経を買って心経《しんぎょう》から始め、どうやら斯うやら今では観音経ぐらいは読めるように成ったが、此の節は若い時分の罪滅《つみほろぼ》しと思い、自分に余計な物でもあると困る人にやって仕舞うくらいだから
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