りとお休みなすって入らっしゃいまし」
と云われ、新吉はお賤の顔を見ながら小声にて、
新「だって、きまりが悪《わ》りいな、これはほんの私の心許りでございますから、貴方|後《あと》でお茶請《ちゃうけ》でも買って下さいまし」
尼「いえ私は喰物《たべもの》は少しも欲しくはありませんお賽銭を上《あげ》たからもうお金などは宜《よ》うございますよ」
新「そんな事をいわずに何卒《どうか》取って置いて下さいまし」
尼「そうでございますか、又気になすっては悪いし、折角の思召《おぼしめし》ですから戴いて置きましょう、日が暮れると雨の降る時は寒うございます、直《じき》に本郷山が側ですから山冷《やまびえ》がしますから、もっと其の麁朶《そだ》をお焚《く》べなさいまし」
新「へい有難う存じます」
といいながら松葉や麁朶を焚べ、ちょろ/\と火が移り、燃え上りました光で、お賤が尼の顔を熟々《つく/″\》見ていましたが、
賤「おやお前はお母《っか》アじゃないか」
八十七
尼「はい、どなたえ」
賤「あれまア何《ど》うもお母アだよ、まア何うしてお前尼におなりだか知らないが、本当に見違え
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