もありますから、小さい方を持って往って足を洗ってお出でなさい」
 新「へえ」
 と是《こ》れから足を洗い、
 新「誠にお蔭様で有難うございます」
 と上りましたが、新吉もお賤もあつかましいから、囲炉裡《いろり》の側へ参り、
 新「お蔭様で助かりました」
 賤「誠にどうもとんだ御厄介さまでございました」
 尼「おや/\御夫婦|連《づれ》で旅をなさいますの、藤心村まで出るとお茶漬屋ぐらいはありますが、此の辺には宿屋がございませんから定めてお困りでしょう、遠慮なしにもっと囲炉裡の側へお寄んなさい」
 新吉は何程か金子を紙に包んで尼の前へ差出し、
 新「是は誠に少し許《ばか》りでございますが、お蔭で助かりましたから、お茶代ではありませんが、どうかこれで観音様へお経でもお上げなすって下さいまし」
 尼「いえ/\それは決して戴きません、先刻《さっき》貴方《あんた》は本堂へお賽銭をお上げなすったから、それでもう沢山でございます、御参詣の方は皆《みんな》お馴染になって、他村《たそん》のお方が来ても上《あが》り込んで、私の様な婆《ばゞあ》でも久しく話をして入らっしゃいますのですから御心配なく寛《ゆっく》
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