って来ましたから、
新「アヽ困ったもんだ」
と云いつゝ二三町参りますと傍《かたわら》の林の処に小さい門構《もんがまえ》の家《うち》に、ちらりと燈火《あかり》が見えましたから、
新「兎も角も彼処《あすこ》へ往って雨止《あまや》みをしよう」
といいながら門の中へ這入って見ると、木連格子《きつれごうし》に成っている庵室で、村方の者が奉納したものか、丹《たん》で塗った提灯が幾つも掛けてあります。正面には正観世音《しょうかんぜおん》と書いた額が掛けてあります。
新「お賤」
賤「あい」
新「こんな処に宿屋はなし、仕方がないから此の御堂《おどう》で少し休んで往こう、お賽銭《さいせん》を上げたらよかろう、坊さんがいるだろう」
といいながら格子の間から覘《のぞ》いて見ると、向《むこう》に本尊が飾って有りまする。正観世音の像を小さいお厨子《ずし》の中へ入れてあるのですが、余り良い作ではありません、田舎仏師の拵《こしら》えたものでございましょう、なれ共金箔を置き直したと見え、ぴか/″\と光って居りまする、其の前に供えた三《み》つ具足は此の頃納まったものか、まだ新しく村名《むらな》が鏤《ほ》り
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