い」
といわれ、漸々《よう/\》心附き、これからお賤の手を取って松戸へ出まして、松新《まつしん》という宿屋へ泊り、翌日雨の降る中を立出《たちい》でて本郷山《ほんごうやま》を越し、塚前村にかゝり、観音堂に参詣を致し、図《はか》らずお賤が、実の母に出逢いまするお話は一息つきまして。
八十六
申続きました新吉お賤は、実に仏説で申しまする因縁で、それ程の悪人でもございませんでしたが、為《す》る事|為《な》す事に皆悪念が起り、人を害す様な事も度々《たび/\》になりまする。扨《さて》二人は松戸へ泊り、翌廿二日の朝立とうと致しますると、秋の空の変り易《やす》く、朝からどんどと抜ける程降りますから立つ事が出来ませんで、ぐず/″\して晴れ間を待っている中《うち》に丁度|午刻過《ひるすぎ》になって雨が上りましたから、昼飯《ひるはん》を食べて其処を立ちましたなれども、本街道を通るのも疵《きず》持つ脛《すね》でございまするから、却《かえ》って人通りのない処がよいというので、是から本郷山を抜け、塚前村へ掛りました時分は、もう日が暮れかゝり、又|吹掛《ふっか》け降《ぶり》に雨がざア/\と降
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