が五両でも八両でも金を遣るのは費《ついえ》だから切殺して仕舞ったが、もう此処《こゝ》にぐず/\してはいられねえ」
賤「私はどうも殴《ぶた》れた処《とこ》が痛くって堪《たま》らないよ」
新「何《な》んだか暗くって判然《はっきり》分らねえ」
といいながら透《すか》して見ると、石だか土塊《どろ》だか分りませんが、機《はず》みとはいいながら打《ぶ》たれた痣《あざ》は半面紫色に黒み掛り、腫《は》れ上っていましたから、新吉がぞっとしたと申すは、丁度七年|後《あと》の七月廿一日の夜《よ》、お累が己を怨《うら》み、鎌で自殺をした彼《あ》の時に、蚊帳の傍《そば》へ坐って己の顔を怨めしそうに睨《にら》めた貌《かお》が、実に此の通りの貌だが、今お賤が思い掛ない怪我をして、半面|変相《へんそう》になるというのも、飽《あく》までお累が己の身体に附纒《つきまつわ》って祟《たゝり》をなす事ではないかと、流石《さすが》の悪党も怖気立《こわげた》ち、ものをも言わず暫くは茫然《ぼんやり》と立って居りましたが、お賤は気が附きませんから、
賤「お前早く人の来ない中《うち》に何処《どこ》かへ往って泊らなくっちゃアいけな
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