を出て来た」
作「仕様がねえだ、己《おら》アこんなむかっ腹を立てる気象だが、詰らねえ事で人に難癖え附けられたから、此所《こゝ》ばかり日は照らねえと思って出て来たのさ」
安「汝《てめえ》は慥《たし》か森藏《もりぞう》の宅《うち》に厄介になっていたじゃアねえか」
作「はい、森藏といっちゃア彼処《あすこ》では少しは賭博打《ばくちうち》の仲間じゃア好《い》い親分だが、何《なん》てってももう年い取ってしまって、親分は耄碌《もうろく》していやすから、若《わけ》え奴等もいけえこといやすから、私《わし》も厄介《やっけえ》になってると、金松《かねまつ》と云う奴がいて、其奴《そいつ》か[#「其奴《そいつ》か」はママ]毀《こわ》れた碌でもねえ行李《こり》を持っていて、自分の物は犢鼻褌《ふんどし》でも古手拭でも皆《みんな》其ん中《なけ》え置くだ、或時|己《おれ》が其の行李を棚から下《おろ》してね、明けて見ると、財布《せえふ》が這入《へえ》ってゝ金が一分二朱と六百あったから出して使ってしまうと、其奴がいうには、此の行李の中へ入れて置いた財布の金が無《ね》え、手前《てめえ》取ったろうというから、己ア取りゃア
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