誰だ」
 馬「誰だって先生、一つ処《とこ》にいた作藏でごぜえやすわね」
 士「なに作藏だと、おゝ然《そ》う/\」
 作「えゝ誠にお久しくお目に懸りやせんが、何時《いつ》もお達者で若《わけ》えねえ、最早《もう》慥《たし》か四十五六になったかえ」
 士「汝《てめえ》も何時も若いな」
 作「己《おら》アもう仕様がねえ、貴方《あんた》実はね私《わし》も先刻《さっき》から見た様な人だと思ってたが、安田一角先生とは気が附かなかったよ」
 士「己の名を云ってくれるなというに」
 作「だッて、知んねえだから気イ附かずに云ったのさ、併《しか》し何《ど》うも一角先生に似て居ると思ったよ」
 安「これ名を云うなよ」
 作「成程|善々《よく/\》視《み》れば先生だ、何《なん》でも隠し事は出来ねえねえ、笠ア冠《かぶ》っているから知れなかったが安田先生だった」
 安「これ/\困るな、名を云うなと云うに」
 作「つい惘然《うっかり》いうだが、もう云わねえ様にしやしょう、実に思え掛けねえ、貴方《あんた》今|何処《どこ》にいるだ」
 安「少し仔細あって此の近辺に身を隠しているが、汝《てめえ》何《ど》うして彼方《あっち》
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