》に人が居るのではないか、暗くって見えはせん提灯《ちょうちん》出しな」
と提灯を引ったくって和尚様が来て見ると、縊《くび》り殺された母に縋《すが》り付いて泣いて居る。
和「どういう訳か」
と聞くと泣いてばかり居て頓《とん》と分りません。漸《ようや》くだまして聞くと是れ/\という。
和「飛んだ事だ」
と直《すぐ》に供の男を走らして村方へ知らせますと、百姓が二三人来て死骸と共に惣吉を藤心村の観音寺へ連れて来て、段々聞くと、便《たよ》る処もない実に哀れの身の上でありますから、
和「誠に因縁の悪いので、親の菩提の為、私《わし》が丹精して遣るから、仇《かたき》を討つなぞということは思わぬが宜《い》い、私の弟子になって、母親や兄《あに》さんの為に追善供養を吊うが宜い」
と此の和尚が丹精して漸《ようや》く弟子となり、頭を剃《そ》りこぼち、惣吉が宗觀《そうかん》と名を替えて観音寺に居る処から、はからずも敵《かたき》の様子が知れると云うお長いお話。一寸一息吐きまして。
八十二
扨《さて》一席申上げます、久しく休み居りました累ヶ淵のお話は、私《わたくし》も昨冬《さくふゆ
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