》より咽喉加答児《いんこうかたる》でさっぱり音声が出ませんから、寄席《せき》を休む様な訳で、なれども此の程は大分咽喉加答児の方は宜《よ》うございますが、また風を引き風声《かざごえ》になりまして、風声と咽喉加答児とが掛持《かけもち》を致して居りますると云う訳でもござりませんが、何時《いつ》までもお話を致さずにも居《お》られませんから、此の程は漸《ようや》く少々よろしゅうございますから、申し残りの処を一席お聞きに入れます。さてお話が二つに分れまして、ちょうど時は享和《きょうわ》の二年七月廿一日の事でございまする。下総の松戸《まつど》の傍《わき》に、戸ヶ崎《とがさき》村と申す処がございまして、其処《そこ》に小僧弁天というのがありまするが、何《ど》ういう訳で小僧弁天と申しますか、敢《あえ》て弁天様が小さいという訳でもなし、弁天様が使いに往《い》く訳でもないが、小僧弁天と申します。境内は樹木が繁茂致しまして、頓《とん》と掃除などを致したことはなく、破《や》れ切れた弁天堂の縁《えん》は朽ちて、間から草が生えて居り、堂の傍《わき》には落葉《おちば》で埋《うず》もれた古井があり、手水鉢《ちょうずばち》
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