お帰り」
と云われ心細いから惣吉は帰って観音堂へ駈上《かけあが》って見ると情ないかな母親は、咽喉《のど》を二巻《ふたまき》程丸ぐけで括《くゝ》られて、虚空を掴んで死んで居る。脊負《せお》った物も亦《また》母が持って居た多分の金も引浚《ひきさら》って彼《か》の尼が逃げました。
惣「アヽお母様《っかさま》、何《ど》うして絞殺《しめころ》されたかねえ」
と頸《くび》に縛り付けてある丸ぐけを慄《ふる》えながら解いて居る処へ、通り掛った者は、藤心村《ふじごゝろむら》の観音寺の和尚|道恩《どうおん》と申しまして年とって居りますが、村方では用いられる和尚様、隣村に法事があって男を一人連れて帰りがけ、
和尚「急がんじゃアいかん」
男「何《なん》だかヒイ/\という声が聞える様に思うだ」
和「ヒイ/\と」
男「怖《おっ》かねえと思って、此処《こゝ》はね化物が出る処《とこ》だからねえ」
和「化物なぞは出やせん」
男「けれども原中でヒイ/\という声が訝《おか》しかんべえ」
和「何も出やアしない」
男「あれ冗談じゃアねえ、だん/\、あれ/\」
和「彼《あ》れは観音様のお堂だ、彼処《あすこ
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