茲《こゝ》にお銭《あし》があるから是を持って行っておいで、心配せずに」
 惣「じゃア母様《かゝさま》私《わし》が薬買って来るから」
 母「よくお聞き申して早く行って来《こ》うよ」
 惣「はい、御出家様お願《ねげ》え申しますよ」
 尼「あいよ心配せずに行っておいで、憫然《かわいそう》に年もいかぬに旅だからおろ/\して涙ぐんで、いゝかえ知れたかえ、先刻《さっき》通った四五町先の榎から左に曲るのだよ」
 惣「あい」
 とおろ/\しながら、惣吉は年は十《とお》だが親孝心で発明な性質《うまれつき》、急いで降る中を四五町先を見当《みあて》にして参りました。先刻通りました処は覚えて居りまして、榎の所から曲ると成程四五軒|家《うち》がある、其処《そこ》へ来て、
 惣「此辺《こゝら》に癪に利く薬でだらすけ[#「だらすけ」に傍点]という様な薬は何処《どこ》で売って居《おり》ますか」
 と聞くと、
 男「此辺に薬を売る処はない、小金《こがね》まで行かなければない」
 惣「小金と云うのは」
 男「小金までは子供で是からは迚《とて》も行かれない、其の中《うち》には暗くなって原中で犬でも出れば何《ど》うする、早く
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