は有ったが惣吉《これ》がにいい付けて置いたら、慌《あわ》てゝ、包の中へ入れて置いたのを置いて参《めえ》りまして」
 尼「薬がなくっては困ったもの、斯《こ》ういう時は苦い物でなければいけない、だらすけ[#「だらすけ」に傍点]が宜《い》いが、今此の先にねえ、あの榎《えのき》の出て居る家《うち》が有る、あれから左の方へ構わず曲って行《ゆ》くと、家が五六軒ある、其処《そこ》の前に丸太が立って、家根《やね》の上に葮簀《よしず》が掛って居て、其処に看板が出てあったよ、癪だの寸白|疝気《せんき》なぞに利く何《なん》とか云う丸薬で、*黒丸子《くろがんじ》の様なもので苦い薬で、だらすけ[#「だらすけ」に傍点]みたいなもので、癪には能く利くよ、お前ねえ、知れまいかねえ、行って買って来ないか、安い薬だが利く薬だが、先刻《さっき》通った時榎があって、一寸休む処《とこ》が有って、掛茶屋《かけぢゃや》ではないが、あれから曲って一町ばかり行《い》くと四五軒|家《うち》があるが、何《ど》うか行って買って来て、私が行って上げたいが手が放されないから」
*「漢方医の調剤する腹痛の丸薬。こくがんし」
 惣「有難う」
 尼「
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