花「悪い奴じゃ、こんな村境《むらざかい》の処へ出やアがって追剥《おいはぎ》をしやアがって悪い奴じゃ、今度《こんだ》此辺《こゝら》アうろ/\しやアがると打殺《ぶちころ》すぞ、いや後《うしろ》に誰《た》れか居やアがるな、此奴《こいつ》組付《くみつい》て居やアがったか」
武「誠にどうも恐入った」
花「誠にも糞もいらん、これ汝《てまえ》の様な奴が出ると村の者が難儀するから此の後《のち》為《し》ないか」
武「為《す》る処《どころ》ではござらぬ、誠にどうも」
花「悪いことするな、是からは為ないかどうだ此の野郎」
と押付けると、
武「うーん」
と息が止った。
花「野郎死にやアがったか、くたばったか、野郎|死《しん》だか、アヽ死にやアがった、馬鹿な奴だ」
と捻《ひね》り倒すと、尾籠《びろう》のお話だが鼻血が出ました。
花「みっともねえ面《つら》だなア、此奴《こいつ》も投込んで遣れ」
と襟髪《えりがみ》を取って沼へ投《ほう》り込み、傘を持ってのそり/\水街道の麹屋へ帰るという、角力取という者はおおまか[#「おおまか」に傍点]なもので。扨《さて》お話は二つに分れて此方《こちら》は
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