惣吉の手を引き、漸々《よう/\》のことで宿屋へ着きましたなれども、心配を致しました揚句《あげく》で、母親がきり/\癪《しゃく》が起りまして、寸白《すばく》の様で、宿屋を頼んでも近辺に良い医者もございませんから、思う様に癒《なお》りません、マア癒るまではというので、逗留《とうりゅう》致して居りました。其の内に追々と病気も癒る様子なれども、時々きや/\痛み、固い物は食われませんから、お粥《かゆ》を拵《こしら》えてこれを食い、其のうち年も果て正月となり、丁度元日で、元日に寝ていては年の始め縁起が悪いと、田舎の人は縁起を祝ったもので、身体が悪いくせに我慢して惣吉の手を引いて出立致し、小金ヶ原《こがねがはら》へ掛り、塚前村の知己《しるべ》の処へ寄って病気の間厄介になろうと、小金の原から三里|許《ばか》り参ると、大きな観音堂がございますが、霙《みぞれ》がぱら/\降出して来て、子供に婆様《ばあさま》で道は捗取《はかど》りません、とっぷり日は暮れる、すると頻《しきり》に痛くなりました。
惣吉「母様《かゝさま》また痛いかえ」
母「アヽ痛い、あゝあのお医者様から貰ったお薬は小さえ手包の中へ入れて置いた
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