て、昨宵《ゆうべ》も己《おい》らは行くのは厭《いや》だけんども母様《かゝさま》が行くから仕方がねえ行くだって得心したが、後《うしろ》を振返《ふりけえ》り/\行く………見ろよ…………あゝ誰か大《でけ》え馬ア引出しやアがって、馬の蔭で見えなくなった、馬を田の畦《くろ》へ押付《おッつ》けろや…あれまア大え庚申塚《こうしんづか》が建ったな、彼《あ》れア昔からある石だが、あんなもの建てなけりゃアいゝに、庚申塚が有って見えやアしねえ、庚申塚|取除《かた》せ」
 村方の者「そんなことが出来よかえ」
 と伸上《のびあが》り/\見送って暇《いとま》を告げる者はどろ/\[#「どろ/\」に傍点]帰る。此方《こちら》は後《あと》に心が引かされるから振返り/\、漸々《よう/\》のことで渡を越して水街道から戸頭へさして行《ゆ》きます。すると其の翌年になりまして花車重吉という関取は行違《ゆきちが》いになりましたことで、毎年《まいねん》春になると年始に参りますが、惣次郎の墓詣《はかまいり》をしたいと出て来ましたが、取急ぎ水街道の麹屋へも寄らず、直《すぐ》に菩提所へ参りまして和尚様に逢うと、是《こ》れ/\といい、つい話
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