》ぬじゃアなし、関取がに逢って敵い討《ぶ》って目出度く帰《けえ》って来たら宜《え》えじゃアねえか」
多「それまア楽《たのし》みにするだが、あんた昨宵《ゆうべ》も人間は老少不定《ろうしょうふじょう》だなんていわれると心持よくねえからね」
母「これで別れましょうよ」
多「左様なら気い付けてね、初めから余《あんま》りたんと歩かねえようにしてねえ、早く泊る様にしなければなんねえ、寒い時分だから遅く立って早く宿へ着かなけんばいけませんぞ…アヽ押《おさ》ねえでも宜《え》え危《あぶね》えだ、前《めえ》は川じゃアねえか、此処《こゝ》へ打箝《ぶちはま》ったらどうする…何卒《どうぞ》大事《でえじ》に行って来てお呉んなせえましよ…なに笑うだ、名残い惜いから声かけるになんだ馬鹿野郎、情合《じょうええ》のねえ奴だ、笑やアがって……あれまア肥料桶《こいたご》担《かた》げ出しやアがった、桶《たご》をかたせ、アヽ桶を下《おろ》して挨拶しているが……あゝ兼だ新田《しんでん》の兼だ、御厄介《ごやっけい》になった男だからなア、あの男も……惣吉様|小《ちっ》せえだけんども怜悧《りこう》だから矢張《やっぱり》名残い惜がっ
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