とまごえ》に参《めえ》りました、明日《あした》立つだッて、なんだかあっけなえこったって、私《わし》の嫁なんざア泣《ね》えてばいいるだ、随分|大事《でえじ》になえ」
 母「はい有難うござえます、お前《めえ》も随分|大事《でいじ》にして、毎《いつ》も丈夫で能くねえ」
 乙「ヘエ誠にどうもお力落しでがんす」
 丙「おい/\何《なん》だってお力落しなんていうんだ」
 乙「でも飛んだ事だと云うじゃアなえか」
 丙「馬鹿いえ、敵討《かたきぶち》にお出でなさるのに力落しという奴があるか」
 乙「ヘエ誠にそれはアお目出度《めでて》えこって」
 丙「これ/\お目出度えでなえ」
 乙「なんでも好《い》いじゃアなえか」
 という騒ぎで、村中餅を搗きましたり、蕎麦を打ったり致して一同出立を祝するという、惣吉|仇討《あだうち》に出立の処は一寸一息。

        七十九

 さて時は寛政十一年十二月十四日の朝早く起きまして、旅仕度を致しますなれども、三代も続きました名主役、仮令《たとえ》小村《こむら》でも村方を離れて知らぬ他国へ参りますものは快くないもので、殊《こと》には年を取りました惣右衞門の未亡人《びぼ
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