が悪うござえまして、見棄てちゃアなんねえというから、あなたのお心へ任して送りはしねえが、切《せ》めて戸頭まで送りてえと思って居ります、塚前《つかさき》の彌右衞門《やえもん》どんは死んだかどうか知んねえが、通り道から少し這入《へい》るばかりだから、ちょっくり塚前へも寄ったが宜《え》い」
 母「それもどうするかも知んなえが、汝《われ》は送らなえが好《え》いよ」
 多「でも戸頭まで送るばいと思って居ります」
 母「送らんで宜《え》いというに何故そうだかなア、汝《われ》ア死んだ爺様《とっさま》の時分から随分世話も焼かしたが家《うち》の用も能く働いたから、何《なん》ぞ呉れ度《て》えと思うけれども何も無《な》えだ、是ア惣次郎が居る時分に祝儀不祝儀に着た紋附《もんつき》だ、汝も是《こ》れから己《おら》ア家《うち》が無くなれば一人前の百姓に成るだから、祝儀不祝儀にゃアこういう物も入《い》るから、此の紋附一つくればいと云う訳だよ、それから金も沢山呉れ度《て》えが、茲《こゝ》に金が七両あるだ、是ア少し訳があって己《おら》が手許《てもと》にあるだから是を汝がにくればい、此の紬縞《つむぎじま》ア余《あんま》り
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