りません、小座敷には酒《さけ》肴《さかな》が散《ちら》かって居り、四畳半の部屋に来て見ると情ない哉《かな》お隅は返り討に逢って非業な死に様《よう》。
主「あゝ気の毒なこと、可哀そうに、でも女一人で往《ゆ》くのは実に不覚であった」
もう今更どうも仕方が無いが一角はというと、一角は此処《こゝ》を遁《のが》れて行方知れず二畳の部屋を明けて見ると沢庵石だの、醤油樽だの七輪の載せてある夜具の下に死んで居る者が一人ござりますから、是から直《すぐ》に麹屋から慥《たしか》に証拠があって敵討をしようと思って返討に成ったという事を訴えになり、直にお隅の書置を羽生村へ持たせて遣りました時には、母も惣吉も多助も
「アヽ左様《そう》とは知らずに犬畜生《いぬちきしょう》の様な恩知らずの女と悪《にく》んだのは悪かった、あゝいう愛想尽《あいそづか》しをいったのも、全く敵が討ちたいばっかりでお隅が家《うち》を出たのであったか、憫然《かわいそう》なことをしたが、お隅が心配して命を棄てたばかりに敵は一角と定まり先《ま》ず富五郎は討止めたが、一角の為に返り討になって死んだといえば悪《にく》いは一角、早く討ち度《た》い」
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