が蹌《よろ》けながら、四畳半の床の上に横になった様子でございますから、そっと中仕切《なかじきり》の襖《ふすま》を閉《た》って、台所の杉戸を締め、男部屋の杉戸を静《しずか》に閉って懐中から出して抜いたのは富五郎を殺害《せつがい》して血に染まった儘《なり》の匕首《あいくち》、此の貞藏があっては敵討の妨げをする一人だから、先《ま》ず貞藏《これ》から片付けようというので、仰向に寝て居る貞藏の口の処へどんと腰を掛けながら、力任せに咽喉《のど》を突きましたから、
 貞「ワーッ」
 といったが掻巻と布団が掛って居りますから、苦《くるし》む声が口籠《くちごも》って外《そと》へ漏れませぬ。一抉《ひとえぐ》り抉ると足をばた/\/\とやったきり貞藏は呼吸《いき》が絶えました。お隅はほっと息を吐《つ》いて掻巻の袖で匕首の血を拭《ぬぐ》って鞘に納め、そっと杉戸を明けて台所へ来て、柄杓《ひしゃく》で水をぐっと呑み、はッはッという息づかい、もう是《こ》れで二人の人を殺しましたなれども、夫の仇《あだ》を討とうという一心でござりますから、顔色《かおいろ》の変ったのを見せまいと、一角の寝床へそっと来て、顔を横に致しまして
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