お床の中に居てねえ、寝てしまってはいけませんよ」
安「なに貞藏などは棄てゝ置けよ」
隅「いゝえ、そうで有りません、ひょっとして貴方が私の様な者でも娶《よ》んで下さいますと、禍《わざわ》いは下《しも》からといって、あゝいう人に胡麻を摺られると堪《たま》りませんからねえ」
安「なに心配せんでも宜《よ》い、じゃア己|此処《こゝ》に、なに寝やあせんよ、おゝ酔った、貞藏隅が送って遣るとよ」
貞「いや是は恐れ入ります、じゃア先生御機嫌よう、お隅さんようございます」
隅「いゝえ、よくないよ、そら/\危ない、何処《どこ》へ、彼方《あっち》がお台所《だいどこ》かえ」
と蹌《よろけ》る貞藏の手を取って台所《だいどころ》の折廻《おりまわ》った処の杉戸を明けると、三畳の部屋がござります。
隅「さ、貞藏さん此処《こゝ》かえ、おや/\お床が展《の》べてあるの」
貞「いゝえ私の床は参ってから敷《しき》っぱなしで、いつも上げたことはないから、ずっと遣るとこう潜り込むので、へえ有難う」
隅「恐ろしい堅そうな夜具ですねえ」
貞「えゝなに薄っぺらでげすが、此の上へ布団を掛けます、寒けりゃア富五郎のが有り
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