御恐悦でげすなア、お隅さんの方から泊って宜《い》いかと云うのは、こりゃア自然のお授かりでげすな」
安「なにお授かりな事があるものか、のうお隅、だが貴様には何《ど》うも分らぬことが一つある、というのは惣次郎の女房になって何ういう間違いかは知らんけれども、安田一角が惣次郎を殺害《せつがい》致したというので、私《わし》を夫の敵《かたき》と狙って、花車重吉を頼んで何処《どこ》までも討たんければならぬと云って、一頻《ひとしき》り私を狙って居るという事を慥《たしか》に人を以《もっ》て聞いたそう云う手前が心で居たものが、又《ま》た此処《こゝ》に来て、一角の女房になろうとは些《ちっ》と受取れぬじゃないか、のう貞藏」
隅「いゝえ、ねえ貞藏さん考えて御覧、羽生村に居るうちは義理だから敵を討つとか何《なん》とか云いましたけれども、なにもねえ元々私が麹屋に奉公をして居て、あの時分枕付ではありませんが、彼《あ》の名主に受出《うけだ》されて行って、妾同様表向の披露《ひろめ》をした訳でもなし、ほんの半年か一年亭主にしただけでございますから、母親《おふくろ》の前や村の人や角力取の前で義理を立って、敵を討つといいは
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