貞「どうも怪しからん、彼奴《あいつ》はいけません、彼奴一体そういう質《たち》の奴でげす、何《ど》うも怪しからん、抜刀《ぬきみ》で口説くなんて、実に詰らん訳でげすなア、だから先生もう彼奴はお止しなすって家《うち》に置かぬ方が宜しい、何うもそういう……」
 安「お隅、貴様はなにか主人に話をして来たか」
 隅「はい何《なん》ともいいませんけれども、お力さんに頼んで置きまして、何しろ先生の御様子を聞かなければ分らない、誠に恥かしいことでございますけれども、先生の処へ行って御様子を聞いて、そうして先生に宥《なだ》めて戴き度《た》いと思って出て参りました」
 安「左様か、雪の夜《よ》ではあるし、是から行《ゆ》くといっても大変だがあんな馬鹿にからかわないが[#「からかわないが」はママ]宜《い》いよ」
 隅「なにもう明日《あした》でも宜《よ》うございますけれども、私は是から一人で帰るのは辛くって、参る時は一生懸命で来ましたが、帰るとなると怖くっていけませんが、どうかお邪魔様でも今夜一晩泊めて下さる訳にはいきますまいか」
 安「うん、それは宜《よ》い、泊って往《い》くなら、なア貞藏」
 貞「是は先生
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