事、独身《ひとりみ》なれば何《ど》うでもなりますから私の家《うち》へ入らっしゃい」
 と親切に労《いた》わって家《うち》へ連れて来て見ると、人柄もよし、年二十一歳で手も書け算盤《そろばん》も出来るから質店《しちみせ》へ置いて使って見るとじつめい[#「じつめい」に傍点]で応対が本当なり、苦労した果《はて》で柔和で人交際《ひとづきあい》がよいから、
 甲「あなたの処《とこ》では良い若い者を置当てなすった」
 惣「いゝえ彼《あれ》は少し訳があって」
 と云って、内の奉公人にもその実《じつ》を言わず、
 惣「少し身寄から頼まれたのだと云ってあるから、あなたも本名を明してはなりません」
 と云うので、誠に親切な人だから、新五郎もこゝに厄介になって居ると、この家《うち》にお園という中働《なかばたらき》の女中が居ります。これは宗悦の妹娘で、三年あとから奉公して、誠に真実に能く働きますから、主人の気に入られて居る。併《しか》し新五郎とは、敵《かたき》同士が此処《こゝ》へ寄合ったので有りますが、互にそういう事とは知りません。
 園「新どん」
 新「お園どん」
 と呼合いまする。新五郎は二十一歳で、誠に何
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