《ど》うも水の出端《でばな》でございます。又お園は柔和な好《よ》い女、
 新「あゝいう女を女房に持ちたい」
 と思うと何《ど》ういう因果因縁か、新五郎がお園に死ぬほど惚れたので、お園の事というと、能く気を付けて手伝って親切にするから、男振《おとこぶり》は好《よ》し応対も上手、其の上柔和で主人に気に入られて居るから、お園はあゝ優しい人だと、新どんに惚れそうなものだが、敵同士とはいいながら虫が知らせるか、お園は新五郎に側へ来られると身毛立《みのけだ》つほど厭に思うが、それを知らずに、新五郎は無暗《むやみ》に親切を尽しても、片方《かた/\》は碌《ろく》に口もききません。主人もその様子を見て、
 惣「お園はまことに希代《きたい》だ、あれは感心な堅い娘だ、あれは女中のうちでも違って居る、姉は何だか、稽古の師匠で豐志賀《とよしが》というが、姉妹《きょうだい》とも堅い気象で、あの新五郎は頻《しき》りとお園に優しくするようだが」
 と気は附いたけれども、なに両人《ふたり》とも堅いから大丈夫と思って居りまするくらいで、なか/\新五郎はお園の側へ寄付《よりつ》く事も出来ませんが、ふとお園が感冐《ひきかぜ》
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