右衞門の処へ参って少しの間厄介に成って居りましたが、素《もと》より若気の余りに家を飛出したので淋しい田舎には中々居られないから、故郷|忘《ぼう》じがたく詫言《わびごと》をして帰ろうと江戸へ参って自分の屋敷へ来て見ると、改易と聞いて途方に暮れ、爰《こゝ》と云う縁類《えんるい》も無いから何《ど》うしたらよかろうと菩提所《ぼだいしょ》へ行って聞くと、親父は突殺され、母親は親父が斬殺《きりころ》したと聞きまして少しのぼせたものか、
 新五「これは怪《け》しからん事、何たる因果因縁か屋敷は改易になり、両親は非業の死を遂げ、今更世間の人に顔を見られるも恥かしい、もう迚《とて》も武家奉公も出来ぬから寧《いっ》そ切腹致そう」
 と、青松院《せいしょういん》の墓所《はかしょ》で腹を切ろうとする処へ、墓参りに来たのは、谷中《やなか》七面前《しちめんまえ》の下總屋惣兵衞《しもふさやそうべえ》と云う質屋の主人《あるじ》で、これを見ると驚いて刄物をもぎとって何《ど》う云う次第と聞くと、
 新五「これ/\の訳」
 というから、
 惣「それなら何も心配なさるな、若い者が死ぬなんと云う心得違いをしてはいけぬ、無分別な
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