査の顔にかぶり付くような事もございます。又金を溜めて大事にすると念が残るという事もあり、金を取る者へ念が取付いたなんという事も、よくある話でございます。
只今の事ではありませんが、昔|根津《ねづ》の七軒町《しちけんちょう》に皆川宗悦《みながわそうえつ》と申す針医がございまして、この皆川宗悦が、ポツ/\と鼠が巣を造るように蓄めた金で、高利貸を初めたのが病みつきで、段々少しずつ溜るに従っていよ/\面白くなりますから、大《たい》した金ではありませんが、諸方へ高い利息で貸し付けてございます。ところが宗悦は五十の坂を越してから女房に別れ、娘が二人有って、姉は志賀と申して十九歳、妹は園と申して十七歳でございますから、其の二人を楽《たのし》みに、夜中《やちゅう》の寒いのも厭《いと》わず療治をしては僅《わず》かの金を取って参り、其の中から半分は除《の》けて置いて、少し溜ると是を五両一分で貸そうというのが楽みでございます。安永《あんえい》二年十二月二十日の事で、空は雪催しで一体に曇り、日光おろしの風は身に染《し》みて寒い日、すると宗悦は何か考えて居りましたが、
宗「姉《あんね》えや、姉えや」
志「
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