かしいねえ、もう夫婦になってお前は亭主だよ、添ってしまって、今夜一晩でも枕を交せば大事な生涯身を任せる亭主だもの、前の亭主の敵《かたき》といって、刄《やいば》が向けられますか、私も武士の娘、決して嘘はつきませぬよ」
七十三
富「こりゃア驚いた、流石《さすが》は武士の御息女、嬉しいな…又|充溢《いっぱい》になってしまった……こりゃア有難い、それじゃア云おうねえ、実は私は、お前にぞっこん惚れていたが、惣次郎があっては仕様がない、邪魔になるといっても、富五郎の手に負いない、所が幸い安田一角がお前に惚れているから、一角をおいやって[#「おいやって」に傍点]弘行寺の裏林で殺させて置いて、顔に傷を拵《こさ》えて家《うち》へ駈込んだが、あの通り花車が感付きやアがって、打《ぶ》つというから、此方《こっち》は殺されては堪《たま》らぬから、逃げてしまった、全く一角が殺しは殺したんだが、実は私がおいやって[#「おいやって」に傍点]遣らしたのだ」
隅「私もそう思ってたけれどもね、羽生にいる時は義理だから敵といっていたけれども、こう出てしまえば義理も糸瓜《へちま》もない他人だアね、あんな
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