奴に何《なん》で此《かく》の如く、な、御疑念が掛るか、私も元は大小を帯《たい》した者、此の儘には捨置けぬと、余程《よっぽど》争いましたが、関取が無暗《むやみ》に打《ぶ》つというから、あの力で打たれては堪らぬから逃げると云う訳で、実に手前詰らぬ災難でげして……」
隅「好《い》いじゃ無いか、私に何も心配はありゃアしないやね、羽生に居る時分には、悔しい、敵打《かたきうち》をするというから私も連れて然《そ》ういったけれども、もう彼処《あすこ》を出てしまやア、何《なん》にも義理はないから私に心配はいらないが、只聞きたいのは富さん忘れもしない羽生にいる時、お前が酔って帰ったことがあったろう、其の時お前が旦那のいない所で私の手を掴まえて、江戸へ連れて行って女房にして遣ろう、うんといえば私が身の立つようにするが、江戸へ一緒に行って呉れぬかと云っておくれの事があったねえ、あれは本当の心から出て云ったのか、私が名主の女房になってたから、お世辞に云ったのか聞きたいねえ」
七十二
富「これは恐れ入りました、こりゃア何《ど》うも御返答に差支《さしつか》える……こりゃア恐入ったね、富五郎困
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