多「まだ立ってやアがる、彼処《あすこ》に立って悪体口をきいていやアがる、早く行け」
隅「大きな声をするない、手前の様な土百姓《どびゃくしょう》に用はないのだ、漸《や》っとサバ/\した」
と故意《わざ》と口穢《くちぎたな》いことを云って、是から麹屋へ来て亭主に此の話をすると、
亭「能く思い切って云った、よし、己がどこ迄も心得たから、心配するな、先《ま》ず手拭でも染めて、すぐ披露《ひろめ》をするが好《よ》い、これ/\これ/\拵《こしら》えて」
というので、手拭|等《とう》を染めて、残らず雲助や馬方に配りました。
亭「今までとは違ってお隅は拠《よんどころ》ない訳が有って客を取らなくっちゃアならん、皆《みんな》と同じに、枕付で出るから方々へ触れてくれ」
というと、此の評判がぱっとして、今までは堅い奉公人で、殊《こと》に名主の女房にもなった者が枕付で出る、金さえ出せば自由になるというので大層客がありまして、近在の名主や大尽《だいじん》が、せっせとお隅の処へ遊びに来ますけれども、中々お隅は枕を交《かわ》しません。お隅の評判が大変になりますると、常陸にいる富五郎が、此の事を聞きまして
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