出でなさえ…此奴《こいつ》ア…又打てねえ…さっ/\と行けい」
隅「行かなくってどうするものか」
とお隅は土間へ下《お》り、庭へ出まして門《かど》の榎《えのき》の下に立つと、ピューピューという筑波|颪《おろし》が身に染みます。
隅「あゝもう覚悟をして思い切って愛想づかしを云わなけりゃア為にならんと思って彼迄《あれまで》にいって見たけれども、何も知らない惣吉が、私の片袖に縋って、どうぞ姉《あね》さん私があやまるから居ておくれ、坊が困るといわれた時には、実はこれ/\と打ち明けて云おうかと思ったが、※[#「救/心」、294−13]《なま》じい云えばお母《っか》さんや惣吉の為にならんと思って思い切って、心にもない悪体《あくたい》を云って出て来たが、是まで真実に親子の様に私に目を掛けておくんなすった姑《しゅうと》に対して実に済まない、お母さん、其のかわり屹度《きっと》、旦那様の仇《あだ》を今年の中《うち》に捜し出して、本望《ほんもう》を遂《と》げた上でお詫びいたします、あゝ勿体ない、口が曲ります、御免なすってください」
と手を合せ、耐《こら》え兼てお隅がわっと声の出るまでに泣いております。
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