隅「何《な》んだい、其方《そっち》へお出でよ、うるさいからお出でよ、袂へ取ッつかまって仕ようが無いヨウ、其方へお出でッたらお出でよ」
 多「惣吉さん、此方《こっち》へお出でなさえ、今迄|坊《ぼう》ちゃんを可愛がったなア、世辞で可愛がった狸阿魔だから、側へ行かないが好《え》え」
 母「惣吉や、此処《こけ》え来《こ》う、幾ら縋っても皆《みんな》世辞で可愛がったでえ、心にもない世辞イいって汝《われ》がを可愛がる振《ふり》いしたゞ、それでも子供心に優しくされりゃア、真実姉と思って己があやまるから居てくんろというだ、其処《そけ》えらを考えたって中々出て行かれる訳のものでアなえ、呆れた阿魔だ、惣吉|此処《こけ》え来い」
 多「此方《こっち》いお出でなさえ、坊《ぼう》ちゃん駄目だから」
 隅「来いというから彼方《あっち》へお出でよ、今までお前を可愛がったのもね、お母《っか》さんのいう通り拠《よんどころ》なく兄弟の義理を結んだからお世辞に可愛がったので、皆《みんな》本当に可愛がったのじゃアないよ、彼方へお出で、行っておくれ、行かないか」
 多「あれ坊《ぼ》っちゃんを突き飛《とば》しやアがる、惣吉さんお
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