てやれ」
 多「さア持ってけ、此の阿魔ア、これエ打てねえ奴だ」
 隅「持ってかなくってどうするものか」
 とお隅は離縁状を開《ひら》いて見まして、苦笑《にがわら》いをして懐へ入れ、
 隅「有難い、アヽこれでさっぱりした」
 多「ア、さっぱりしたと云やアがる、どうも悪《にく》い口い敲きやアがるなア此の阿魔」
 隅「なんだねえ、ぎゃア/\おいいでない、長々御厄介様になりました、お寒さの時分ですから随分御機嫌よう」
 多「えゝぐず/\云わずにサッサと早く行かなえかい」
 隅「行かなくって何《ど》うするものか、縁の切れた処にいろっても居やアしない」
 と悪口《あっこう》をいいながらつか/\と台所へ出て来ますと、惣吉は取って十歳、田舎育ちでも名主の息子でございますから、何処《どこ》か人品《じんぴん》が違います、可愛がってくれたから真実の姉の様に思っておりますから、前へ廻ってピッタリ袂《たもと》に縋《すが》って、
 惣「姉様ア、お母《っか》アが悪ければ己があやまるから居てくんなよ、多助があんなこと云っても、あれは誰がにもいう男だから、己があやまるから、姉《あね》さん居てくんなえ、困るからヨウ」
 
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