借りようと思って麹屋へ行って話をして、江戸へ行けば親類もありますから、江戸へ行きたいと思いますが、行くには少し身装《みなり》も拵《こしら》えて行きたいから、まア此処《こゝ》で、三年も奉公して行きますからお願い申しますといって、証文の取極めをして、前金《ぜんきん》も借りて来てあるのだから、是から行って麹屋で稼ぎ取りをして行こうと思うのだ、もう私の身体は麹屋の奉公人になっているのだから、少しでも傷が附けば麹屋で打捨っておかないよ、願って出たら済むまい、さ、打《ぶ》つなら打って御覧」
多「呆れたア、此奴《こいつ》何《ど》うも、お内儀様《かみさん》此間《こねえだ》お寺へ墓参《はかめえ》りに行《ゆ》く振《ふり》いして麹屋へ行って証文ぶって来たてえ、此の阿魔こりゃア打《ぶ》てねえ、えゝ内儀様《かみさま》、義理も人情も、あゝこれエ本当に何うも打てねえ阿魔だ」
母「やア、もう宜《い》いワイ、恩も義理も知んなえ様な畜生と知らずに、惣次郎が騙《だま》されて命まで捨《すて》る事になったなア何《なん》ぞの約束だんばい、そんな心なら居て貰っても駄目だから、さア此処《こけ》え来《こ》う、離縁状書えたから持たし
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