惚れていたのを此方《こっち》へ嫁付《かたづ》いたから、それを遺恨に思って旦那ア殺したんだ、して見れアお前《めえ》が殺したも同し事じゃアなえか、それを弁《わきま》えなえでお母様《っかさま》や惣吉さんを置いて出れば、義理も何も知んねえだ、狸阿魔《たぬきあま》め」
 隅「何《なん》だい狸阿魔とは、失礼な事をお云いで無い、そりゃア頼みもしましたから恩も義理もあるには違いないけれども、それだけの勤めをして御祝義を戴いたので当然《あたりまえ》の事だアね、それから私を貰い切って遣るから来い、諾《はい》といって来ただけの事だから、旦那が殺されたって、敵を討つ程の義理もないじゃアないか、表向|披露《ひろめ》をした女房というでもなし、いわば妾も同様だから、旦那がいなけりゃア帰りますよ」
 多「此の阿魔どうも助けられなえ阿魔だ、打《ぶ》つぞ、出るなら出ろ」
 隅「なんだい手を振上げてどうする積りだい、怖い人だね、さ打《ぶ》つなら打って御覧、是程の傷が出来ても水街道の麹屋が打捨《うっちゃ》っては置かないよ」
 多「ナニ麹屋……金をくれた事アあるけど麹屋がどうした」
 隅「此の間お寺へ行《ゆ》くといって、路銀を
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