い夫婦でもありませぬからねえ」
多「それじゃアお隅さん、本当に旦那の敵い打《ぶ》つてえ考《かんげ》えもなえ、惣吉さんもお母様《っかさま》も置いて行《ゆ》くというのかア」
隅「左様さ」
多「魂消たね本当《ほんと》かア」
隅「嘘にこんなことがいえるものか、今日出て行《ゆ》こうというのだよ」
多「呆れたなア、そんだら己えいうが」
隅「何をいうの」
七十
多「旦那が麹屋へ遊びに行った時酌に出て、器量は好《えゝ》し、人柄に見えるが、何処《どこ》の者《もん》だというと、元は由《よし》ある武士《さむれえ》の娘で、これ/\で奉公しております、外の女ア皆《みんな》枕付《まくらつき》でいる中に私《わし》は堅気で奉公をしようというんだが、どうも辛くってならねえて涙ア澪《こぼ》して云うだから、旦那が憫然《かわいそう》だというので、金えくれたのが初まり、それから旦那が貰《もれ》え切ってくれべいといった時、手を合せて、誠に然《そ》うなれア浮びます助かりますと悦《よろこ》んだじゃアなえか、それに又旦那様ア斬殺《きりころ》されたというのも、早《はえ》え話が一角という奴がお前《めえ》に
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