《こゝ》なア母様《はゝさま》ア江戸を見たこともなし、大生の八幡《はちまん》へも行ったことアなえという田舎|気質《かたぎ》の母様だから、一々気に障る事《こた》アあるだろうが、実はこういう事があって気色が悪いとか、あゝいう事をいわれてはならぬという事があるなら、私がに話いしておくんなさえ、まア旦那が彼《あ》アなってからは力に思うのはお前|様《さん》の外に誰もないのだ、惣吉|様《さん》だって彼《あ》の通り真実《ほんとう》の姉|様《さん》か母様《かゝさま》アの様に思って縋《すが》っているし、敵の行方は八州へも頼んでえたから、今に関取が出て来れば手分《てわけ》えして富五郎を押えて敲《たゝ》いたら、大概《たいがい》敵は一角に違《ちげ》えねえと思ってるくらいだから、機嫌の悪い事が有るなら私にそういって、どうか機嫌直してくださえ、ねえお隅さん」
 隅「何をいうのだね、お前は何も気を揉むことはないやね、お母《っか》さんも呆れて出て行《ゆ》けというから離縁状を貰っておくんなさい、私は仇打《あだうち》は出来ません、仕方なしに仇を打つと云ったので実は義理があるからさ、よく/\考えて見れば馬鹿げている、それ程深
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