者《もん》が誰も褒めねえ者《もん》はなえ、惣次郎が無《な》え後《のち》も僅《わず》かハア夫婦になった許《ばか》りでも、亭主と思えば敵《かたき》イ打《ぶ》たねえばなんなえて、流石|侍《さむれえ》の娘は違った者《もん》だと村の者《もん》も魂消《たまげ》て、なんとまア感心な心掛けだって涙ア溢《こぼ》して噂アするだ、今に富五郎や安田一角の行方は関取が探してどんな事をしても草ア分けて探し出して、敵《かたき》イ打《ぶ》たせるって是迄丹精したものを、お前《めえ》がフッと行ってしめえば、跡は老人《としより》と子供で仕様がなえだ、ねえ困るから何《ど》うか居てくんなよ」
隅「嫌《いや》ですねえ、江戸で生れた者がこんな処に這入って、実に夫婦の情でいましたけれども、斯《こ》うなって見ると寂しくっていられませぬもの、田舎といっても宿場と違って本当に寂しくって居《い》られませんからねえ、何卒《どうか》直《すぐ》に遣って下さいな、此処《こゝ》に居たって仕方が有りません、江戸へ行《ゆ》けば親類は武士でございますから、相当な処へ縁付《えんづ》けて貰います、私も未《ま》だそう取る年でもございませぬから、何時《いつ》まで
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