もべん/\としてはいられませぬ、お前さんはどうせ先へ行《ゆ》く人、惣吉さんは兄弟といった処が元をいえば赤の他人でございますからねえ、考えて見ると行末《ゆくすえ》の身が案じられますから」
 母「じゃアどうあっても子供や年寄が難儀イぶっても構わなえで置いて行《ゆ》くというかい、今迄|敵《かたき》イ討《ぶ》つといったじゃアなえか、今それに敵イ討たなえで縁切になって行くとア訝《おか》しかんべい、敵イ討つといった廉《かど》がなえというもんじゃア無《な》えか」
 隅「初《はじま》りは敵《かたき》を討《う》とうと思いましたけれども、誰が敵だか分らぬじゃアありませんか、善々《よく/\》考えて見ますと、富五郎を押えて白状さして、愈々《いよ/\》一角が殺したと決ったら討とうというのだが、屹度《きっと》富五郎、一角ということも分らず、それも関取が附いていればようございますが、関取もいず、して見れば敵が分っても女の細腕では敵に返討《かえりうち》になりますからねえ、又それ程|何方《どなた》にも此方様《こちらさま》に義理はありません、漸《ようや》く嫁《かたづ》いて半年位のことで[#「ことで」は底本では「とで」]、
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