って呉んろよ、お隅は何処《どこ》へか行ったか」
 隅「はい」
 と部屋から着物を着換え、乱れた髪を撫付けて小包を持って参りましたから、
 母「このまア寒いのに何処へか行《ゆ》くかイ」
 隅「はい、改めてお願いがござります」

        六十九

 隅「不思議な御縁で、水街道から此方《こちら》へ縁付いて参りました処が、旦那様もあゝいう訳でおかくれになりました、旦那がおいでならお側で御用を達《た》して、仮令《たとえ》表向の披露《ひろめ》はなくとも、私も今迄は女房の心持で働いておりましたけれども、斯様《こう》なって旦那のない後《のち》は余計者で、却《かえ》って御厄介になる許《ばか》りでございますし、江戸には大小を帯《さ》す者も親類でもございますから、何卒《どうか》江戸へ参り度《た》いと思いまして、私もべん/\と斯《こ》うやっても居《お》られません今の内なら、何《ど》うか親類が里になって縁付《かたづ》く口も出来ましょうと思いまして、私は江戸へ帰りますから、どうか親子の縁を切って、旦那はいなくっても貴方の手で離縁に成ったという証拠を戴きませぬと、親類へも話が出来ませぬから、御面倒でも一寸お
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