富「左様どうして是を」
 花「是は手前《てまえ》が刀を抜いてちょん/\切合ったという後《あと》で丁度其の側を通り掛って此の刀を拾うたが、些《ちっ》とも抜けない、此の抜けない脇差をどうして抜いて切合ったかそれを聴こう」
 富「それア、それア私《わし》が転倒《てんどう》致した」
 花「何が転倒した」
 富「それは私《わし》は大勢を相手に切結んでおり、夜分でげすから能く分りませぬが、全く鞘の光を見て抜身と心得ましたかも知れませぬが、私が手引をして…是は怪《けし》からん事でげす、どうも左様な御疑念を蒙りましては残念に心得ます」
 花「そら/\手前《てめえ》のいうことは皆《みんな》間違っていらア、鞘の光を見て抜身で切合ったと思ったというが、鞘ごと切れば鞘に疵がなけれアならねえ、芒尖《きっさき》から火花を散《ちら》したというが鞘ごと切合ってどうして火花が出るい」
 富「じゃア全く転倒致したのでげす、全く向《むこう》同士ちょん/\切合って火花が出たのでげしょう、大勢の暗撃《やみうち》で向同士…どうも左様な手引をして殺したという御疑念は手前少しも覚《おぼえ》がございません」
 花「なに云わなけりゃ
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