惣次郎を私《わし》が手引で殺させましたといっちまいねえ」
 富「これは怪しからん、怪しからん事があるものだね、関取外の事とは違います、私《わし》は一角という者は存じませぬ、知りもしない奴に仮令《たとえ》どの様な慾があっても、頼まれて旦那様を殺させたろうという御疑念は何等《なんら》の廉《かど》を取って左様なことを仰しゃる、と関取で無ければ捨置けぬ一言《いちごん》、手前も元は武士でござる、何を証拠に左様な事を仰せられるか、関取承りたいな」
 花「嘘《そら》つくない、正直にいってしまいな、手前《てめえ》が鼻薬を貰って、一角に頼まれて旦那を引き出したといってしまえば、命|許《ばか》りは助けてやる、相手は一角だから敵《かたき》を打たせる積りだが、何処迄《どこまで》も隠せば、拠《よんどころ》なくお前《めえ》の脊骨を殴《どや》して飯を吐かしても云わせにゃならん」
 富「これはどうも怪しからん、関取の力で打たれりゃア飯も吐きましょうが、ど、どういう訳で、怪しからん、なな何を証拠に」
 花「そんなら見せてやろう、是は其の時旦那の帯《さ》して行った脇差だろう、これを帯して出た事は聞いて来たのだ、さどうだ」
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