お前さんは見ただろうねえ」
 富「そりゃア見ましたとも、旦那はお手利《てきゝ》でげすからちょん/\/\/\切合いました」
 花「それに相違ないねえ」
 富「相違も何もありません、現在|私《わし》が見ておったから」
 花「うん然《そ》うかえ、富さん、もっと側へお出でなさい、今日は一杯[#「一杯」は底本では「一抔」]飲みましょう」
 富「それは誠に有難いことで、時に何かお頼みがあるという事でげすが早速取立てましょう、なに造作もないことで」
 花「それに付いて種々《いろ/\》話があるのだがもっと側へ」
 富「じゃア御免を蒙《こうむ》って」
 花「さて富さん、人と長く付合うには嘘を吐《つ》いてはいかないねえ」
 富「それは誠に其の通り信がなくてはいけませぬねえ」
 花「今お前のいったのは皆嘘と考えて居る、旦那様が脇差を抜いてちょん/\切合い、お前も切結んだと、そんな出鱈目《でたらめ》の事をいわずに正直なことをいってしまいねえ」
 富「な何《な》んだ、これは恐入ったね、どうも怪《け》しからん事を、ど、どういう訳でな何んで」
 花「やい、それよりも正直に、慾に目が眩《くら》んで一角に頼まれて恩人の
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