所中は、どうか関取がお勝になる様にと神信心をしていますよ」
 花「それは有り難い、仮令《たとえ》虚言《うそ》でも日の下開山横綱と云って貰えば何《なん》となく心嬉しい、やア、お茶を上げろよ、さア此方《こっち》へ」
 富「関取、さぞ御愁傷で」
 花「やアお互のことで、嘸《さぞ》お前さんもお力落しでございましょう」
 富「イヤ此度《こんど》は実に弱りまして、只もうどうも富五郎は両親《ふたおや》に別れたような心持が致しますなア」
 花「然《そ》うでございましょう、私《わし》も実は片腕もがれた様だといいましょうか」
 富「然うでげしょう、私も実に弱りましたね」
 花「就《つ》いて富さん、お前さんが供に行ったのだとねえ」
 富「左様」
 花「どんな奴でございますえ、切った奴は」
 富「それはもう何《な》んとも残念千万、弘行寺の裏林へ掛ると、面部を包んで長い物をぶち込んだ奴が十四五人でずっと取り巻いて、旦那が金を三十両持っているのを知って、出せ身ぐるみ脱いで置いてけというから、旦那に怪我をさせまいと思って、旦那を何《なん》と心得る、旦那は羽生村の名主様だぞ、若《も》し無礼をすれば引縛《ひっくゝ》って
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