い奴だが心に情《なさけ》のない慾張った奴だから、事に依ったら一角にお出で/\をされて鼻薬を貰うて、一角の方に付いて、彼奴《あいつ》が手引をして殺させやアせんかと思う、それ此の通り抜けぬのに抜いて切合ったというのが第一おかしいじゃないか」
母「あれやまア其処《そこ》らには気が付かんで、只まア魂消てばいいました、ほんにそうかもしんねえよ、其の頭巾|冠《かぶ》ったのはどんな恰好だっきゃア」
花「それは暗《やみ》だから確《しっか》り分らんが、一角じゃないかと私《わし》の心に浮《うか》んだ、斯《こ》うしておくんなさい、私は黙って帰るが、富五郎が帰ったら、今日花車が悔《くや》みに来て種々《いろ/\》取《とり》こんだ事があって遅くなった、就《つい》ては他《わき》へ二百両ばかり貸したが、どう掛合っても取れないから、どうかして取ろうと中へ人を入れたが、何分《なにぶん》取れないが、若《も》し富五郎さんが間へ這入ったら向《むこう》の奴も怖いから返すだろう、若しお前の腕から二百両取れたら半分は礼に遣るが、どうか催促の掛合に往ってくれまいかと、花車が頼んだが行って遣らんかといえば、慾張《よくばっ》ているから
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